平成26年8月に広島市を襲った土石流災害から1年経った今年、またもや関東・東北を襲った豪雨災害、毎年大規模化する自然災害で犠牲者が後を絶ちません。

今回の災害は、川幅400mもの巨大鬼怒川がまさか氾濫するとは誰が予測したんでしょうか。しかも堤防が決壊する被害にまで発展してしまいました。

被害に遭った地域の方は、「まさかここで」「まさか自分の家が」「まさかこの川が氾濫するとは」いつも聞かれる「まさか」の言葉です。

今や正に、まとまった雨が降ればすぐにでも災害が発生すると思わなければなりません。

今回の災害で、避難指示が発令になった時点で、どれほどの方が避難したか調査したところ、とんでもないことが分かりました。

行政側の対応の遅れは認めざるをえませんが、それにしても避難指示が発令になっても避難行動を起こしていません。

宮城県大崎市の各地区の動きを検証したところ、平均0.3%の方しか避難指示に従っていないことが判明しました。

最も多くの方が避難した所でさえ、22.6%でした。

被害に遭われ、避難せずに(避難できなかった方含む)犠牲にならなかった方は、運が良かったとしか言いようがありません。命を落としていたかもしれませんから。

避難を促すには、住民に対し情報をいかに早く適切に伝えるかが重要です。その一つが「同報系防災行政無線システム(屋外スピーカー、個別受信機)」です。

それでは、避難に関する放送はどのようにすれば有効になるかを提言いたします。

屋外スピーカーから流れる内容が聞こえない。または反響して何を言っているかわからない。といった声を聞きます。

屋外スピーカーでの情報伝達システムは、ツールの一つとしては必ず必要ですが、100%でないことも事実です。

聞こえないから意味がない!という前に、住民としては聞く努力をすることが一番重要です。(重要ポイント)

① 防災無線で放送があれば、とにかく聞こえるような方法をとること。(外に出る。窓を開ける等など)

② 聞こえなかった場合は、スピーカーが付いている電柱の下のボックスの中に受話器があるので、それで再生確認する。

③ 音声再生確認電話があるので、NTT回線で指定されている番号で発信元へ電話すれば、自動再生で放送内容が確認できる。

行政の対応方法

① 放送担当者は、声が良く通る職員が放送すること。(マイクを通すものの、声には波長があり、普段から良く通る人の声は更に有効となる。)

② 予告トーンの「ピンポンパン」は使わない。(通常放送と思い、聴く側に緊張感が発生しない。)

③ 避難準備情報は、放送の中で「避難の準備をしてください。」と言うだけではなく、最初に「避難準備情報です。」「避難準備情報です。」と2~3回必ず告げる。

④ 予告トーンは、緊急通知の場合のトーンを作っておく。(サイレンは必ずしも有効ではないので、短信号で波長の高い音を採用すると有効である。)

⑤ 避難勧告・避難指示は避難の判断に使われているが、住民にとっては危険度が低くとられる言葉になっている。(命令と言う言葉が使われないので。)

⑥ 気象警報のランクが「特別警報」という危険度が高いランクが設定されたが、これは、気象庁での警告判断のランク付けなので、行政は更に行動を起こす言葉に変えて伝えなけ

ればならない。

これからは、「非常事態宣言を発令します。」という言葉を最終手段として使うことを重要なポイントとして提言します。

住民は、非常事態宣言が発令されれば、必ず避難する。避難困難者は行政を中心に地域全体で避難にあたるといった措置をとることが重要となります。

現在は、避難指示が最終の避難通告となっていますが、過去の災害事例を見てもほとんど効力を発していないのが現状です。

ややもすると、行政側は、指示を出したのに避難しないのは住民が悪いと思っている節があります。とんでもないことです!

いかにして命令一家で動かすか、それが住民の命を救うカギであることを、特に市町村長は認識していただきたいと思います。

私は常日頃から、「分子の原理」という言葉を皆さんに伝えています。

災害発生は全国どこにでも存在しています。これが分母であり、その中で分子の1にあたったところが犠牲となるのです。

次はあなたの所が分子の1になるかもしれません。

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